大晦日。
小判とふたり、ゆっくりとしていました。
猫になった小判を横目に、年越し蕎麦の準備をしたり、と。
リリリリリン、とやけに大きいレトロな黒電話が二人しかいない家に響き渡り。
不吉な予感はしたものの、電話を取りました。
滅多に鳴らない、電話を。
「・・・はい、緋乃で御座います。」
『ああ、お前か。』重圧的な声。
血が繋がってるとは思えない、その無機質な。
愛情の欠片も感じさせない雰囲気が、昔からわたしは苦手だった。
___どこか、他人の。見知らぬ男の人のようで。
「・・・今晩は。何か御用が御座いますのでしょうか?」
『お前、年末も帰ってこないつもりか』_____・・・・何を、今更と、思った。
__________母を、わたしを省みなかった昔を見ようともせず。
___母が死んでも、お墓参りにも来ないのに。
「・・・・・結構です。わたくし、そちらには行けません。もう予定が入っていますので。」
フン、と鼻を鳴らす、高慢的な音がした。
『大した用でもあるまい。どうせくだらん学園だかなんだかの奴らとの予定か?そんなものよりこちらを優先するのが筋であろう』・・・・・・・わたし。
・・・・・・・・・・・・・・・もう・・・・・・・・・・・・・・・・・・
我慢の限界みたいです。「・・・・そんなもの?・・・・・くだらん?」
「貴方にわたくしの大切なものの価値が分かってたまるものですか。」
「どうして好きでもない、苦痛でしかない場所に好き好んで行くものですか。」
「今まで気にも掛けなかったのですから、どうぞ放っておいて下さい。」
「・・・・・行っても楽しくないです。ありがたみもなにも御座いませんので」
「失礼致します」
一方的に電話を切ると、除夜の鐘の鳴る音がした。
・・・・年越しが、こんな最低なものになるとは。
「・・・小判。明けましておめでとう・・・」
コタツで寝こける小判に呟くと、ひとりぽつんと夜空を見上げた。
「この年も、皆様に幸多からんことを・・・・」